アナルめく日々

「♪負けないで もう少し 最後まで 走り抜けて〜♪」

暑いので無理!!(氷風呂に満面の笑みでダイブしながら)。


あ、そうそう、僕も少し前に23歳になりました。正直言って23歳ってキツいっすわ〜。少しでも油断するとうんことか猛烈に臭いからね。キムチ鍋とか焼き肉とか食ったらもう最悪。最も悪!! 小学生のときにお父さんがウンコした後ってスゲー臭いと子供ながらに思ってた記憶がフラッシュバックしたもの。

しかも便所って往々にしてスゲー狭いじゃん。わずか1畳ほどの空間でモリモリとうんこするわけだからどう考えたってこれは生き地獄以外のなにものでもない。しかも最近は6月のくせに狂ったような暑さじゃないですか。もちろん便所の中もムンムンとサウナ状態ですわ。そんなただでさえ足を踏み入れたくない禍々しい空間に23歳のクズが、京都にある怒った顔の像みたいな表情で鎮座している。暑さによる汗と肛門に感じる衝撃による冷や汗を絶妙のバランスでブレンドしながらモリモリうんこしている。なかなかにパニックな状態じゃないの。

そんなときに決まって僕は思い出す。その昔、『ミスターちんのお宅訪問』という番組があったことを。

それは”ミスターちん”っていう、後ろに続く言葉──例えば「こわれる」「コカイン」など──によっては「ピー」がかかってもおかしくない芸人が、様々な芸能人のお宅を訪問し、冷蔵庫にある食材をつまむことに命を賭けた番組だった。今日はそんなテレビ番組と僕の中学生時代をオーバーラップさせて話をしたいと思う。

僕はあと36時間後に迫った夏休みの終わりを呪いながらリビングでゴロゴロしていた。目の前には高々と積み重ねられた夏休み終了2日前にして1ミリも手をつけていない膨大な量の宿題。遠くから見たら巨大な正露丸と見間違えるほどに真っ黒に日焼けした僕は坊主頭をボリボリとかきむしり、

「よし、12時になったら本気出す」

と、未来の自分に向けて江原もビックリするほどスピリチュアルな意思表示を行い、テレビの電源を入れた。後になってそのメッセージは「明日から本気出す」に変わったことは言うまでもない。

というわけで夏休み終了36時間前にして宿題を全く処理していない廃人であるところの僕はテレビを見ていた。まるでムダ毛の処理をせずにスナック菓子をむさぼってはブクブク太っていく女のような精神構造だ。そりゃ23歳になっても日記にうんことか書いてるわ。母ちゃん、ただでかいだけのクズに育ちました。ありがとうありがとう、先月22歳のクズから23歳のクズにクラスチェンジしました。ありがとう、ありがとう。

いくら中学生で世の中の全てに興味津々だったとはいえ、平日の昼にやっている番組はどれもこれも恐ろしく退屈だった。僕たちが年を重ね、街にはマンションが増え、意味も無く集まっては恋の話を夜通し語り明かしたあの公園が無くなろうとも、昼のテレビ番組はいつだって退屈だ。

「食器の洗い方を少し変えただけで姑がブチギレてコッペパンでぶん殴ってきた」とか
「一生の友達だと思ってた人から借金の連帯保証人を頼まれたからぶん殴った」とか
そういった死ぬほどどうでもいい事を克明に再現したVTRがだらだらと流れていた。

僕は世の中の多くの人がするように4、6、8、10、12の完成され、洗練されたローテーションでチャンネルをカチャカチャと切り替えていた。膨大なカネをかけてこんなクソ番組しか作れないのか、と思って当時の愛読書である『スラムダンク』に手を伸ばそうとしたそのときだった。『ミスターちんのお宅訪問』が始まった。

ジーザス・クライスト!!!」

好きだった。あの頃僕は『ミスターちんのお宅訪問』に目がなかった。三度の飯より『ミスターちんのお宅訪問』だった。芸能人の家は案外ださかったりしたけど、たまにマジでセンスのいい家が出てくると心が躍ったものだった。あぁ、僕も将来こんな風にハイセンスな家を持ち、幸せな家庭を作りたい。休みの日にはランチバスケットを持って公園に行こう。夜はビートルズのレコードを聴きながら柔らかいソファにもたれ、ゆっくりとした時間を過ごしたい。そんな妄想を膨らませて楽しんだものだった。それが今じゃ岩みたいに固いソファに座り、ウイスキーを飲みながら壁に向かってブツブツ独り言を言ってるという体たらく。来る日も来る日も白いカーペットに染み付いたチューインガムのシミのようにパソコンの前に粘着し、インターネットばかりしている。満23歳の成人男性にも関わらずこんなエンドレス・生ゴミ・ライフを続けているなんて、これはもはや自決も視野に入れなくてはならないだろう。

そんな回想も交えつつ、僕は『ミスターちんのお宅訪問』を血眼になって見ていた。その回は料理人の周富徳が出演していた。周富徳は僕の地元に家を構えていたこともあって異常なまでに集中した。今になって思い出せるのがこの回だけなんだから脳に焼き付いているのだろう。そして中学生であった僕はただのオツムの弱いエロサムライだった。

「こいつくらいの金持ちなれば毎晩キングサイズのベッドに金髪美女がゴロゴロに違いない」

そのあまりのバカさから「金持ち=毎晩ハーレム」という方程式を信じていた。あの家の中はどうなっているのか興味津々だった。ひょっとしたら壁の本棚の本を少しいじったら壁が動きだし・・・そこには裸の女がゴロゴロいて・・・。

そんな妄想に取り憑かれた僕は
「今日こそ真実を突き止めてやる!」
「真実はいつも一つ!!」 
江戸川コナンを想起させる勢いで画面に全神経を集中させていた。こんなに画面に集中するなんて久しぶりだった。前回は確かエロビデオを見ていたときだ。

エロビデオのモザイクが邪魔で仕方ないという、中学生男子にとっては「人はなぜ争うのか」にも匹敵するテーマについて昼休みに皆で会議をしていた。するとそれまで黙って話を聞いていた1人のエロサムライがおもむろに顔を上げた。その中学生離れした性に関する知識とフェチとかを通り越した変態っぷりからエロ仙人の称号を欲しいがままにしていたクラスメイトの鈴木だった。
「目を細めてみろよ? モザイクの向こう側が見えるぜ?」

次の瞬間には光よりも早く帰宅し、エロビデオをセッティングしている自分がいた。将来タイムマシンが出来たとして、自分の子孫がこの性欲の弾丸と化した僕の姿を見たら涙するに違いない。でも中学生の男子なんて往々にしてそんなものだ。

結論から言おう。喜んでいるときの相撲取りのように目を細めてもモザイクが消えることはなかった。



いや! その話じゃなくて!! お宅訪問の話だよ!! このエロガッパが!!

僕が覚えているのは周富徳の家のトイレだけだ。ミスターちんが料理人の家の冷蔵庫から何をつまんだのかなんて全く覚えていない。覚えているのはトイレだけだった。

「ファキンサノバビッチ!! なんちゅう広さや!!」

僕はそのあまりの広さにちびりそうになった。10畳。トイレが10畳という僕ら貧乏人には想像することも許されない広さだった。壁は全て1ミリの傷も無く鏡のように磨き込まれた大理石だった。蛇口や取っ手などの金属部分には金箔が張られ、黄金の輝きを放っていた。手を洗う場所なのに、手を洗わずに触るのをためらってしまいそうだった。エアコンによって室内は常に快適な温度に保たれており、クリーンな空気を送り込んでくれる。便器は純粋な女の子のパンティのように清潔なホワイトに保たれていた。コーナーには適度な高さの観葉植物が控えめに配置され、涼しげな雰囲気と同時に癒しを演出していた。便座に座って正面を向くとそこには大画面のテレビが紙1枚入る隙間も無いほど正確に壁にはめ込まれていた。

「こ、これは幻だ。僕は幻を見ているんだ」

僕は汁を残したまま放置しされスパイシーな香りを発しているカップラーメンを完全に無視してテレビに没頭していた。宇宙だった。周富徳はトイレに宇宙を作っていた。

ところがここはどうだ。一畳ほどのスペースにも関わらず物置と化した便所。所狭しと物が積み上げられている。何ここ? 豚小屋? 養豚場の一室かと見紛うほどに荒んでいる。まぁいいか。全てはやはりカネなんだ。世の中はカネか。カネさえあれば10畳のトイレが作れるのか。

それでも結局のところカネは出て行く一方だ。なんだ、うんことカネって出て行く一方だな。あ、カネはいいけどうんこが戻ってきたら困るか、ははは!! とか気が狂ったことをブツブツ言いながらケツを拭いて立ち上がると便座の上に見知らぬ物体が落ちていることに気づいた。

うん、普通にうんこが便座に落ちてた。

エエエエエエエエエエエエエ!!!!!!

生まれてから便座に脱糞したなんてことなかったからマジでビックリした。幻かと思ったけど間違いない。それまで自分の行動を振り返ってみて納得した。僕は大学二年の頃にいわゆるイボ痔ってやつをやりましてね、それアナルには人一倍気を使って生きているんですわ。一応治ったとは言え、再発する可能性が高いのがイボ痔というものだ。

ウォシュレットが一番いいんだけど僕の家には非常に残念ながらそれが設置されていない。仕方なく、トイレットペーパーを水に浸してソフトタッチにしてからケツを拭いているわけ。君たちにこの苦労がわかるか? どこの便所であろうとウォシュレットがなかったら僕はトイレットペーパーを水に浸してからソフトにしてからケツを拭いているのだよ。うんこのために使う時間が1日3分としよう。1年通したら1080分。つまり18時間も痔に怯える生活をもう2年も続けているんだ。ふざけんなアナル。

つまりだ、事前にトイレットペーパーを水に浸してから便所に入るわけだが、たまに忘れてしまうときがある。そういうときは水を流したときにちょっと腰を上げてくるりと後ろに反転し、便器の上の水が出る所にトイレットペーパーを浸すわけ。そのときだね。間違いなく。そのまま気づかず座っていたらと思うと本当にぞっとする。どう考えても頭とアナルがおかしいとしか思えない。

僕もこの異常事態を誰かに伝えなければならないと思い、この悲惨なトイレット・ハプニングをこの前の飲み会で満面の笑みで話したんですよ。そしたらその場にいた女の子が素で引いてたからね。なんかもうウジ虫扱いでしたからね。あまりにムカついたんでソイツが頼んだ鳥の唐揚げを一気食いして、ほっけの塩焼きで横っ面バンバン引っ叩いてやりましたからね。

後日、友達から聞いた話ですがあのゾウリムシはスケベな話とセクハラ、あげくの果てにはうんこの話しかしないからもう呼ばなくてイイとのことでした。

僕が犯した悪事は水に流せないようです。余談ですが僕はカレーが大好きです。今日は中村屋のインドカリーを食べてきました。一口食べて驚愕。あまりにうますぎて椅子から頃がり落ちて床をゴロゴロと転がり、隣りに座ってたインド人の頭に焼きたてのナンをのせて「黒カッパ発見!!」と咆哮をあげました。

「♪負けないで もう少し 最後まで 走り抜けて〜♪」

暑いので無理!!(氷風呂に満面の笑みでダイブしながら)。


あ、そうそう、僕も少し前に23歳になりました。正直言って23歳ってキツいっすわ〜。少しでも油断するとうんことか猛烈に臭いからね。キムチ鍋とか焼き肉とか食ったらもう最悪。最も悪!! 小学生のときにお父さんがウンコした後ってスゲー臭いと子供ながらに思ってた記憶がフラッシュバックしたもの。

しかも便所って往々にしてスゲー狭いじゃん。わずか1畳ほどの空間でモリモリとうんこするわけだからどう考えたってこれは生き地獄以外のなにものでもない。しかも最近は6月のくせに狂ったような暑さじゃないですか。もちろん便所の中もムンムンとサウナ状態ですわ。そんなただでさえ足を踏み入れたくない禍々しい空間に23歳のクズが、京都にある怒った顔の像みたいな表情で鎮座している。暑さによる汗と肛門に感じる衝撃による冷や汗を絶妙のバランスでブレンドしながらモリモリうんこしている。なかなかにパニックな状態じゃないの。

そんなときに決まって僕は思い出す。その昔、『ミスターちんのお宅訪問』という番組があったことを。

それは”ミスターちん”っていう、後ろに続く言葉──例えば「こわれる」「コカイン」など──によっては「ピー」がかかってもおかしくない芸人が、様々な芸能人のお宅を訪問し、冷蔵庫にある食材をつまむことに命を賭けた番組だった。今日はそんなテレビ番組と僕の中学生時代をオーバーラップさせて話をしたいと思う。

僕はあと36時間後に迫った夏休みの終わりを呪いながらリビングでゴロゴロしていた。目の前には高々と積み重ねられた夏休み終了2日前にして1ミリも手をつけていない膨大な量の宿題。遠くから見たら巨大な正露丸と見間違えるほどに真っ黒に日焼けした僕は坊主頭をボリボリとかきむしり、

「よし、12時になったら本気出す」

と、未来の自分に向けて江原もビックリするほどスピリチュアルな意思表示を行い、テレビの電源を入れた。後になってそのメッセージは「明日から本気出す」に変わったことは言うまでもない。

というわけで夏休み終了36時間前にして宿題を全く処理していない廃人であるところの僕はテレビを見ていた。まるでムダ毛の処理をせずにスナック菓子をむさぼってはブクブク太っていく女のような精神構造だ。そりゃ23歳になっても日記にうんことか書いてるわ。母ちゃん、ただでかいだけのクズに育ちました。ありがとうありがとう、先月22歳のクズから23歳のクズにクラスチェンジしました。ありがとう、ありがとう。

いくら中学生で世の中の全てに興味津々だったとはいえ、平日の昼にやっている番組はどれもこれも恐ろしく退屈だった。僕たちが年を重ね、街にはマンションが増え、意味も無く集まっては恋の話を夜通し語り明かしたあの公園が無くなろうとも、昼のテレビ番組はいつだって退屈だ。

「食器の洗い方を少し変えただけで姑がブチギレてコッペパンでぶん殴ってきた」とか
「一生の友達だと思ってた人から借金の連帯保証人を頼まれたからぶん殴った」とか
そういった死ぬほどどうでもいい事を克明に再現したVTRがだらだらと流れていた。

僕は世の中の多くの人がするように4、6、8、10、12の完成され、洗練されたローテーションでチャンネルをカチャカチャと切り替えていた。膨大なカネをかけてこんなクソ番組しか作れないのか、と思って当時の愛読書である『スラムダンク』に手を伸ばそうとしたそのときだった。『ミスターちんのお宅訪問』が始まった。

ジーザス・クライスト!!!」

好きだった。あの頃僕は『ミスターちんのお宅訪問』に目がなかった。三度の飯より『ミスターちんのお宅訪問』だった。芸能人の家は案外ださかったりしたけど、たまにマジでセンスのいい家が出てくると心が躍ったものだった。あぁ、僕も将来こんな風にハイセンスな家を持ち、幸せな家庭を作りたい。休みの日にはランチバスケットを持って公園に行こう。夜はビートルズのレコードを聴きながら柔らかいソファにもたれ、ゆっくりとした時間を過ごしたい。そんな妄想を膨らませて楽しんだものだった。それが今じゃ岩みたいに固いソファに座り、ウイスキーを飲みながら壁に向かってブツブツ独り言を言ってるという体たらく。来る日も来る日も白いカーペットに染み付いたチューインガムのシミのようにパソコンの前に粘着し、インターネットばかりしている。満23歳の成人男性にも関わらずこんなエンドレス・生ゴミ・ライフを続けているなんて、これはもはや自決も視野に入れなくてはならないだろう。

そんな回想も交えつつ、僕は『ミスターちんのお宅訪問』を血眼になって見ていた。その回は料理人の周富徳が出演していた。周富徳は僕の地元に家を構えていたこともあって異常なまでに集中した。今になって思い出せるのがこの回だけなんだから脳に焼き付いているのだろう。そして中学生であった僕はただのオツムの弱いエロサムライだった。

「こいつくらいの金持ちなれば毎晩キングサイズのベッドに金髪美女がゴロゴロに違いない」

そのあまりのバカさから「金持ち=毎晩ハーレム」という方程式を信じていた。あの家の中はどうなっているのか興味津々だった。ひょっとしたら壁の本棚の本を少しいじったら壁が動きだし・・・そこには裸の女がゴロゴロいて・・・。

そんな妄想に取り憑かれた僕は
「今日こそ真実を突き止めてやる!」
「真実はいつも一つ!!」 
江戸川コナンを想起させる勢いで画面に全神経を集中させていた。こんなに画面に集中するなんて久しぶりだった。前回は確かエロビデオを見ていたときだ。

エロビデオのモザイクが邪魔で仕方ないという、中学生男子にとっては「人はなぜ争うのか」にも匹敵するテーマについて昼休みに皆で会議をしていた。するとそれまで黙って話を聞いていた1人のエロサムライがおもむろに顔を上げた。その中学生離れした性に関する知識とフェチとかを通り越した変態っぷりからエロ仙人の称号を欲しいがままにしていたクラスメイトの鈴木だった。
「目を細めてみろよ? モザイクの向こう側が見えるぜ?」

次の瞬間には光よりも早く帰宅し、エロビデオをセッティングしている自分がいた。将来タイムマシンが出来たとして、自分の子孫がこの性欲の弾丸と化した僕の姿を見たら涙するに違いない。でも中学生の男子なんて往々にしてそんなものだ。

結論から言おう。喜んでいるときの相撲取りのように目を細めてもモザイクが消えることはなかった。



いや! その話じゃなくて!! お宅訪問の話だよ!! このエロガッパが!!

僕が覚えているのは周富徳の家のトイレだけだ。ミスターちんが料理人の家の冷蔵庫から何をつまんだのかなんて全く覚えていない。覚えているのはトイレだけだった。

「ファキンサノバビッチ!! なんちゅう広さや!!」

僕はそのあまりの広さにちびりそうになった。10畳。トイレが10畳という僕ら貧乏人には想像することも許されない広さだった。壁は全て1ミリの傷も無く鏡のように磨き込まれた大理石だった。蛇口や取っ手などの金属部分には金箔が張られ、黄金の輝きを放っていた。手を洗う場所なのに、手を洗わずに触るのをためらってしまいそうだった。エアコンによって室内は常に快適な温度に保たれており、クリーンな空気を送り込んでくれる。便器は純粋な女の子のパンティのように清潔なホワイトに保たれていた。コーナーには適度な高さの観葉植物が控えめに配置され、涼しげな雰囲気と同時に癒しを演出していた。便座に座って正面を向くとそこには大画面のテレビが紙1枚入る隙間も無いほど正確に壁にはめ込まれていた。

「こ、これは幻だ。僕は幻を見ているんだ」

僕は汁を残したまま放置しされスパイシーな香りを発しているカップラーメンを完全に無視してテレビに没頭していた。宇宙だった。周富徳はトイレに宇宙を作っていた。

ところがここはどうだ。一畳ほどのスペースにも関わらず物置と化した便所。所狭しと物が積み上げられている。何ここ? 豚小屋? 養豚場の一室かと見紛うほどに荒んでいる。まぁいいか。全てはやはりカネなんだ。世の中はカネか。カネさえあれば10畳のトイレが作れるのか。

それでも結局のところカネは出て行く一方だ。なんだ、うんことカネって出て行く一方だな。あ、カネはいいけどうんこが戻ってきたら困るか、ははは!! とか気が狂ったことをブツブツ言いながらケツを拭いて立ち上がると便座の上に見知らぬ物体が落ちていることに気づいた。

うん、普通にうんこが便座に落ちてた。

エエエエエエエエエエエエエ!!!!!!

生まれてから便座に脱糞したなんてことなかったからマジでビックリした。幻かと思ったけど間違いない。それまで自分の行動を振り返ってみて納得した。僕は大学二年の頃にいわゆるイボ痔ってやつをやりましてね、それアナルには人一倍気を使って生きているんですわ。一応治ったとは言え、再発する可能性が高いのがイボ痔というものだ。

ウォシュレットが一番いいんだけど僕の家には非常に残念ながらそれが設置されていない。仕方なく、トイレットペーパーを水に浸してソフトタッチにしてからケツを拭いているわけ。君たちにこの苦労がわかるか? どこの便所であろうとウォシュレットがなかったら僕はトイレットペーパーを水に浸してからソフトにしてからケツを拭いているのだよ。うんこのために使う時間が1日3分としよう。1年通したら1080分。つまり18時間も痔に怯える生活をもう2年も続けているんだ。ふざけんなアナル。

つまりだ、事前にトイレットペーパーを水に浸してから便所に入るわけだが、たまに忘れてしまうときがある。そういうときは水を流したときにちょっと腰を上げてくるりと後ろに反転し、便器の上の水が出る所にトイレットペーパーを浸すわけ。そのときだね。間違いなく。そのまま気づかず座っていたらと思うと本当にぞっとする。どう考えても頭とアナルがおかしいとしか思えない。

僕もこの異常事態を誰かに伝えなければならないと思い、この悲惨なトイレット・ハプニングをこの前の飲み会で満面の笑みで話したんですよ。そしたらその場にいた女の子が素で引いてたからね。なんかもうウジ虫扱いでしたからね。あまりにムカついたんでソイツが頼んだ鳥の唐揚げを一気食いして、ほっけの塩焼きで横っ面バンバン引っ叩いてやりましたからね。

後日、友達から聞いた話ですがあのゾウリムシはスケベな話とセクハラ、あげくの果てにはうんこの話しかしないからもう呼ばなくてイイとのことでした。

僕が犯した悪事は水に流せないようです。余談ですが僕はカレーが大好きです。今日は中村屋のインドカリーを食べてきました。一口食べて驚愕。あまりにうますぎて椅子から頃がり落ちて床をゴロゴロと転がり、隣りに座ってたインド人の頭に焼きたてのナンをのせて「黒カッパ発見!!」と咆哮をあげました。