いやはや、病院でもらった花粉症対策の薬がマジで効きまくっている。おかげでくしゃみ・鼻水・目のかゆみの全てが、高校入学したばかりで右も左もわからない内気な少女くらい大人しくなってくれた。スカートは長めね。これから1ヶ月くらいはヤク漬けの毎日になりそうだけど、まぁ仕方ないだろう。

それにしても先日は早起きした(前日の夕方5時に寝たから)。え…? なんだって? は、早起きだとジーザス!? こ、この僕が早起きをしただと!? ごめん、ちょっと自分で言ってビックリしすぎた。マザファッカ。

ここ最近のライフスタイルを思い出してみよう。アニメを見たり腐った生ゴミみたいな日記をシコシコと更新したりと生産性ゼロ行為に没頭しているうちについつい寝るタイミングを逃してしまい、外が明るくなってきた頃にウゾウゾと布団に入り剛眠。数時間後に「ふぁ、よく寝たむぅ〜。」と地面にめり込むくらいのローテンションでむっくり起きあがるとブラインドの隙間からは全く光が射しておらず、ぶっちぎりで夜ということを認識。といったM・S・L(マジ・死んだ方がいい・ライフスタイル)を年間365日中、少なく見積もっても200日は続けていた。よし、今すぐこの世は終焉しろ。

その僕が早起きしたのだ。これはアイドルのハナクソなみに貴重だ。マジ天文学的数値で貴重だって。

例えるなら…

今日は高校の入学式。希望に満ち溢れる新生活を天が祝福してくれたかのように晴れ渡った春のある一日のこと。世の中の新高校一年生が胸や股間を様々な種類の期待でパンパンに膨らませて元気よく登校する日だ。しかし、こういう肝心な日に限っていつも寝坊してしまうやつもいるものだ。友達と午前中に待ち合わせしても来た試しが無い。あいつには集合時間を1時間早く伝えるしかないな。そんな扱いを受けるようなレベル。

タカユキも例外ではなかった。その日も当然寝坊してしまい、心底焦りながら身支度もそこそこに、呆れ顔の母を後ろ目に家を飛び出した。パンを口にくわえ、Yシャツの裾すら満足に入れず、学校までの道のりをダッシュ。パンを口にくわえながら全速力でダッシュという、ドーピングばりばりのベン・ジョンソン顔負けの曲芸を周囲に惜しげも無く披露しながら閑静な住宅街を騒々しく駆け抜けていく。住み慣れた街。タカユキはこの辺りの道なら全て頭の中に入っていた。

「あの角を曲がって、向井さんちの脇道を抜けた方が早い!!」

そう判断したタカユキは減速を最低限に押さえたストライド走法で直角カーブに突入した。身体を倒し、遠心力を中和する。次の瞬間。雷が直撃したのではないかと思うほどの衝撃が額から全身を駆け抜け、轟音が頭に響いた。同時に地面に叩き付けられ、よく晴れた空が目の前に広がる。空と雲の境界線がどんどんとぼやけていく。って、ちょっと待ったぁぁ!! すんでのところで意識を持ち直す。空の代わりに女子高生が視界に飛び込んできた。

え? 女子…高…生? しかも地面に倒れている。どうやら自分とぶつかったのはこの女子高生であることは間違いない。しかし、どうも様子がおかしい。ぴくりとも動かない。まさか…!! 彼女に駆け寄って声をかけようと近づくと、また衝撃が走った。しかし、それは先ほどのそれとは違うタイプの衝撃だった。

か、かわいい…。

よく手入れされた綺麗な髪。つんとして高い鼻。閉じていても容易にわかるほど大きな目。すらりと伸びた脚。いちご柄のパンツ。

い…いちご柄のパンツ?

げ…幻覚だ。頭に喰らった衝撃のせいで僕は幻覚を見ているんだ。タカユキは心の中で何度も確認した。こんな状況においてもパンツのためになると思春期の男は冷静になれるようだ。もう一度よく見てみよう。いちご柄のパンツなんかが見えるわけない…見えるわけ…。

「ん…ん…。」

しまったっ!! 気づかれたか!? って意識は回復したほうがいいだろーが! ここは安心するところだろ!! 突如として意識を回復した美少女に対して意表を突かれたことと、パンツを見ようとしたのがバレないようにというのもあり、タカユキは飛び退いた。ましてやタカユキは異性に対して免疫が無い。

「いった〜。・・・ん? あなた…は…。」
「ご、ごめん! ちょっと急いでて、そんで近道しようと、そしたら君が…! そんでえっと…!」

タカユキは美少女がいきなり意識を回復したこと、相手がとんでもなくカワイイこと。その間もいちご柄のパンツが太ももの間から恥ずかしそうに見えていることに気が動転してしまい、その中でも特に不埒な原因によってうまく状況を説明できない。むしろ世の中の高校一年生で、この状況をさらりと説明できる輩がいたら今すぐ紹介してもらいたい。しかし、現実とは時として残酷なものである。少女はすぐに目の前の得体の知れぬ男の視線が自分の下半身に向かって一直線であることに気づいた。

「きゃ〜〜〜!!!!!!!!!!」

か弱い女の子が対象の強力な力によって、嫌がることを無理矢理させられちゃいそうな感じを連想させるソプラノトーンが閑静な住宅街に響き渡る。

「変態っ!!」
「ち、ちがうって! おちつい…!!」

男の性(サガ)に関連する内容の弁明をするかしないかのうちに今日三度目の衝撃が左の頬から入り、右の頬を貫いた。




と、早起きの貴重さや大切さを曲がり角を曲がったら美少女と出会うことに例えて記そうとしたらキーボードが暴走してこんな展開になってしまった。決して自分のせいではない。キーボードのせいだ。さっさと地球が爆発してくれればこんなことにはならなかったのに。非常に不愉快だ! よし! 借りてきたヘルシングのDVD見るぞ〜! 明日の説明会のエントリーシートはおろか、証明写真すら撮ってないぞ〜!

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