ラブレター・パニック

僕くらい手のつけようのないゴミクズになると、公共料金は催促のハガキが送られてくるまでビタイチ払わずに延滞しまくり。そのハガキってのが、赤ペン先生もビックリってレベルで赤色の文字だらけなんですよ。

「〜日までに支払わないと電気・水道・ガス・携帯止めるぞ?社会のウジ虫がっ!死ね!!」

といった心温まる内容がところ狭しと書いてあるわけ。ファンキーな事情でサバイバルな家庭環境じゃなければ、実家に住んでる人は、見たことない人がほとんどだと思う。

過去にも、嫌なことは後回しという典型的なクズの思考から

「ヘヘッ!!本当に止まるかどうか、試してみるずら!!」

とか思ってハナクソほじりながら無視したら、何の前触れもなく止められましたからね。血も涙もあったもんじゃないっすよ。

歴史は繰り返すってヤツでね、今月も既に3ヶ月分の公共料金を抱えてたんですよ。社会人になってもやっぱりゴミクズはゴミクズですね。お父さん、お母さん、24年間かけて小さなゴミクズから粗大ゴミクズに育ちました。ありがとうありがとう。ご飯いっぱい食べた。全部うんこになりました。ありがとうありがとう。

さすがにここまで気持ちのいいくらいのクズっぷりを発揮している僕でも翌日横浜に引っ越すにも関わらず未払いのまま放置はさすがにまずいと思い、仕方なくまとめて払うことにしたんです。

あ、ちなみに今回は4500文字オーバーです。

「大丈夫!!俺は引きこもって10年目だから時間だけはある!!」

とかいう特殊な事情を持つ剛の者以外は、通勤途中の電車や、大好きなあの人を想ってなかなか寝つけない夜、仕事中に暇すぎてハナクソほじる以外にやることないって時にでも読んで頂けたら幸いです。

大量でしたね。シーズンを迎えたベーリング海カニ漁かと思うくらい大量の滞納でした。

業者からすれば、
「大量の滞納にSAY!NO!!」
ってな感じで今井メロばりのリリックを浴びせたいだろう滞納っぷりでした。

しぶしぶ払いに行こうとして家を出たのですが、こんなにモッサリ滞納してるくらいだし、まだ忘れてる支払いがあるやもしれぬ、と念のため郵便ポストを開けたんですよ。すると何やら大事そうな書簡が投函されていたんです。見た瞬間にブリブリっと理解しましたね。


ラブレターだ。


僕の引っ越し前。二度と会えなくなるかもしれないという淡く儚い想い、堀北真希があまりにも可愛いという決定的事実。全ての要素がその書簡がラブレターだということを示していた。

思えば学生時代は机の中や、開いた教科書の中にラブレターが入っていたりしたものだ。

想いを文章にするのは難かしい。でも恐れを知らなかったあの頃。僕らは手に手にロケット鉛筆を持ち、芯を使いきっては友人の黒澤くんのロケット鉛筆の芯と勝手に交換していた。

今も文章力は何も変わっていない。誰かに気持ちを伝えるなんて何年もしていない。今だって伝えたいことの1/10も伝えられないだろう。本当に心の底から思いを伝えることで自分が傷ついたときの傷の深さを恐れているのかもしれない。いつの間にか大切なことを忘れ、頭でっかちでになり、人の批判ばかりしては価値のない優越感に浸っていたのかもしれない。

だが僕はいま思う。想いを寄せる相手とコミュニケーションを取ろうとする姿勢に、愛しさと切なさと心強さとを覚えて何が悪いというのか。もしそんな自由さえ制限され、みんなが自粛するようになったら、世の中はひどくつまらないものになるだろう。

人とのコミュニケーションが希薄化されてきたいま、恋文が持つパウア(POWER)には計り知れないものがある。この広大なるガイアにおいて、恋文は今や貴重な存在になりつつあるのかもしれない。



放課後の教室で1人、私は机に向かっていた。野球部だろうか、かけ声が断続的に耳に入ってくる。

髪を耳にかける。髪を伸ばし始めたのも、彼は長い方が好きと耳にしたからだ。直接聞いたわけでもない。出どころもわからない噂だった。それでも良かった。可能性が1%でもあるなら、そこにかけてみたかったのかもしれない。

伸びた髪の長さは私が彼に心を奪われていた時間。肩にすら届いていなかったのに、今は胸まで達している。

私は決心してペンを持った。まるで重大な一手を指す棋士のように、最初の一文字を紙に落とす。

以前、周りの友達が彼氏にせっせと手紙を書いていたときに質問したことがあった。

「なんだか手紙って照れくさいっていうか恥ずかしくない?」

友達の大半は顔色一つ変えずにこう答えた。

「こんなこと皆やってるじゃん」

確かに皆やってるかもしれないが、私にはできなかった。

でもいま、私はこうして手紙を書いている。純度100%のラブレターを書いている。そこには何の助力もないし、背中を押してくれる友達もいない。私はただ書きたくて書いているのだ。飛べない豚はただ豚なんだ。

今まで彼と共有してきた時間は全て覚えている。そのほとんどは刹那的なものだった。でも私にとってはかけがえのないもの。きっとこれからもそうなのだろう。

もしこの想いが彼に届けば、過去に彼と共有した時間は二人の始まりになるし、駄目だったら私だけの思い出になるだけだ。

ルーズリーフをあげた時、初めて下駄箱でバイバイを言えた時。スカイブルーの猫型ロボットがポケットからテンポよく道具を出すように、私の目の前に、彼と共有した時間が次々と映し出されていく。

初めて下の名前で呼ばれた時、夕日がいっぱいに差し込んで金色に染まった放課後の教室で、私は恥ずかしすぎて顔すらまともに見ることが出来なかったんだっけ。私の紅く染まった頬を、夕日はうまく隠してくれただろうか。

そういった時間は少しずつだけど着実に積み重なり、いま大きな動力としてペンを走らせてくれる。

私だっていざとなればペンを早く動かすこともできるし、それなりに綺麗な字を書くことくらい出来る。自分の頭の中に並んでいる様々な想いを1つずつ丁寧に取り出し、そっと抱えて書き出していく。

どれくらいの時間が経っただろう。私は髪をかきあげてから小さく息を吐き、ペンを置いた。2度、3度と読み返す。文章はおかしくないだろうか。いくら考えても私には最後の答えを出すことなんて出来ない。結局のところ伝えたいことは1つしかないのだから。いま目の前に誕生した文章は、無限にある表現方法の選択肢のたった1つに過ぎない。

もし私がゴリラだったら胸を激しく叩いていただろうし、口ひげを蓄えたイタリア人の配管工だったら無抵抗のクリボーを片っ端から踏み潰し、ノロノロと歩く亀さんの中身を甲羅から引っこ抜きまくった後、クッパをボコボコにすることで愛する人への想いを表現しただろう。

伝えたいことはすごくシンプルで簡単なはずなのに、いざ伝えるとなると何でこんなに難しいんだろう。いくら考えても答えが出るはずもない。それは朝起きたばかりで目が

зз

になっている裸眼の野比のび太氏(exドラえもん)が、10キロ先のみかんをスコープなしでスナイパーするようなものだった。


ю:】←ジャイアン




ごめん、いま剛田剛は全然関係なかった。



私は紙をテクニカルに折り畳む。ある部分を引っ張ればスルリと紙が開くギミックが仕込まれたオーソドックスなタイプだ。

誰にも見られてないことを確認し、繊細に折り畳んだ恋文を彼の教科書にはさむ。明日の1時間目は数学。明日は83ページからだから85ページあたりにはさんでおこう。

放課後の静まり返った教室で、私は心臓が口から飛び出しそうになるほどドキドキしながら教科書をそっと机の中にしまった。まるで熟練された花屋が新しい苗を植えるように。

彼の机は窓際にあり、そこからは外がよく見える。都会の騒々しさに蓋をするように太陽が沈み始めていた。空を飛ぶ鳥たちは夕べを急ぎ、グラウンドではカラフルなトレーニングウェアを身に纏った学生たちがボールを追って忙しく動いている。まるで百姓一揆のように思い思いに体を動かしている。

カバンを持ち、教室を後にする。ドアを開ける前に一度、彼の机を振り返る。私が書いた手紙は、私の気持ちの結晶でありながら、既に私の手の届かないところに存在しているような気がした。

夕日が窓から差し込み、冬の日だまりほどのぬくもりを感じる。いつかと同じような金色が教室いっぱいに広がっていた。



オゲッバァブゲバッブゥゥゥゥ!!!!!!!
青春ダァァァァァりゃsssっ鞘主hyぴうあfさくぁwせdrftgyふじこ!!!

学生時代から、我輩はルーズソックスよりハイソックス派だったんだー!!

前フリが長くなりすぎて自分でもドン引きしたんだけど、こんな具合に可愛らしい娘っ子がしたためてくれたラブレターに決まってんじゃないすか。

最近こういう純粋無垢な気持ちって少ないじゃないですか。ドキドキなんて全くしとりません。口から心臓が飛び出るどころか、肛門から腸が飛び出るくらいが関の山でしたからね。

かくしてモンモンとしながらもソウルフルな精神状態で差出人の名前を確認したんですよ。

ん?

セゾン…カー…ド…????



ギャーーーース!!!!!!!
カードの支払い忘れてたぁぁぁぁ!!!!!!

ラブレターから一転して不幸の手紙ですよ。不幸の手紙なら何人かに回せば不幸は回避できるらしいけど、カードの支払いは無理!!イムポッシボー!! 略してイムポ!イムp(ry


まじやっべ!!へへっ、こんなやべぇ時だってのにオラわくわくしてきたぞっ!!

オラワクしてきたぞっっ!!

そういや先月25日に
「明日はカードの決済日だからヤツラにブン捕られるに引き出しちまえいっ!!ていやっさ〜!!」
と口座に入っていた金を鼻息荒く全額引き出したんだった。完璧忘れてた。てへっ、うっかりミス!


ю:}←ジャイ子


いや、ジャイ子も関係なかった。


「明日セゾンに隕石が落ちればなんとかなんべ」
という可能性にかけてたのに全然落ちなかったな。仕方ない。諦めてピリリッと小気味よく封を破いて更にビビりました。

今月の請求額
\96394

ギャーーーーーーーーーース!!!!!!!!!!(ボブサップキンタマを握りつぶされながら)

ななな…なんじゃごりゃぁぁぁぁ!!!!(数学の教科書85ページにはさまれたラブレターを粉末状になるまでビリッビリに破きながら)

マジで狂ってる。世の中狂ってるわ。僕みたいにボランティア活動(主に自室の掃除)に従事したりしてる純粋無垢な人間から、何の悪ふざけかワカんないけど10万近いカネをむしり取ろうとは…っっ!! いったいどこまで悪なんですか。 格差社会ですか、そうですかそうですか。格差が問題ではないんですよ。貧困が問題なんですよ。そうなんですよそうなんですよ。

公共料金と携帯料金含めたら20万近いですからね。度を越したイタズラですよこれは。

でも払わないと仕方ない。どんなに嫌なことでも真っ直ぐに向き合った時、道は開けるものだ。かの有名なメロスだって頑張って走りとおしたじゃないか。メロスがいきなり

「ちょっと遅れるわ」

とか言い出したらそこで物語終了でしょ! いいか! 俺の物語はまだ始まってすらいねえんだよ! 堀北真希と出会ってもないのに人生ヤメられっか! サンポールドメスト混ぜられっか!

仕方なく、別の銀行から27万ほど引き出しに行きましたよ。え?20万でいいのになんで27万かって? あ、バレました? 君たちって脳ミソがゴマ粒くらいしかないからバレないかと思ったけど、さすがに気づきましたか。頑張ってソロバンはじきましたか。

27-20=7!! イェス!! ラッキーセブン!!

この7万でね。やることって言ったら1つっすよ。パチスロよ、
PA☆CHI☆SU☆RO☆

3時間後…

というわけで24万持って払いに行きました。コンビニのレジにあり得ない金額が表示されてんの。判子押す人とレジ打つ人で2人がかりだったからね。周りにいた人たちもドヨドヨですよ。

「なにあれ、人間のクズ?」
「けんじ、見ちゃダメッ!」
「ほら、駅前の交番に貼ってあった写真にクリソツよ!!」


みたいな黄色い声援が戦国無双の矢みたいにモリモリ飛んできてましたからね。

みんなも一人暮らしを始めたら公共料金はちゃんと払いましょうね。
約束だぜっ!?

それではまた


P.S
今さらながらDSを買ったので、DSのソフトで面白いヤツを教えて下さい。堀北真希が声優をしているレイトン教授とかなんとかいうのは既に購入決定しとりますので他ので頼みます。